公共労速報239

医労連国際シンポジウム報告
〜2016年9月6日〜

 看護師の夜勤交替制労働の改善を目指す国際シンポジウムが、日本医労連主催で 9月6日、東京都内で開催されました。ILOと、各国の医療関係労組の代表が参加し、それぞれの 国の現状と課題を報告し交流しました。
 公共労からは6人が参加しました。参加者のひとり中国支部の 佐藤麻子さん(看護師)から報告を寄せていただいたのでご紹介します。

ILO

クリスチャンヌ・ウィスコー氏
 不規則な勤務体制は健康・家庭生活・職場の安全・看護の質に悪い影響をもたらすILO149号条例のおもな特徴は、労働者をひきつける条件である。 その条件は夜勤勤務以外の労働者と同等ないしそれ以上であり、 労働時間・週休・年次休暇・教育休暇・出産休暇・病気休暇・社会保障が挙げられる。
 夜勤勤務者は自分たちの労働条件を改善する権利があることを知り、現在の状況を語り、対話する必要がある。 実際の労働条件が良くない証拠はあるのだから。労働条件が整っていないとどうなるのか、 反対に考え、組織に訴えるといいと述べた。
 また、ILOでは、私たちのヘルスケアに投資することが報われ、私たちが辞めることが損失になると考えている。 私たちには健康である為の権利があると述べた。
参考:ILO(国際労働機関)
 185カ国が加盟している。国際連盟の一機関として設立され、労働条件の改善や社会福祉の向上に関する勧告、指導を行っている。
国連は議論を展開するために2016年3月に「保健医療部門の雇用と経済成長に関するハイレベル委員会」を立ち上げた。
(2030年までにすべての人に健康的な生活を確保するという目的の為には、世界中、とりわけ低・下位中所得国で、 保健医療部門労働者の大幅増員が必要になることを発表した。
 また有能なスタッフを引き留められるような強靭な医療保険部門を確立するには、 男女平等、結社の自由、社会的対話等の保険労働者の権利の尊重が重要であることを強調した。)

フランス

フランソワーズ・ゲング氏
 夜勤は健康への悪影響を及ぼし、平均寿命よりも8年短くなるという結果がでている。女性では乳がんの発生率が高くなる。フランスでは夜勤労働時間の短縮(21時〜7時まで)を勝ち取り55歳の早期定年退職制度を取り入れた。 夜勤の辛さが保障される新たな権利を獲得する必要があり、自分の健康を害してはいけないと述べた。
各国のシンポジスト。
フランスの代表は日本の16時間夜勤について
「信じられない!ヨーロッパでこの話をしても信じてもらえないだろう」
と驚いていた。

オーストラリア

ニコラス・ブレイク氏
 看護師1人に対し4人を超えて患者が1人増えると、入院30日以内に患者が死亡する率が7%増加するなど、 国際的エビデンスを紹介した。(裏につづく) 「患者対看護師の配置基準」を導入し、看護師の離職率を改善することで、看護の質の向上をもたらしたことを報告した。看護師の雇用はコストがかかるため、離職率を下げることがコストの軽減につながる。また、看護の質が向上し、再入院が減少することでさらにコストを下げることにつながると述べた。 看護師の生活・家庭生活は看護の質に影響するためよりよい規制が必要と述べた。

韓国

ハン・ミジョン氏
 韓国では看護師、患者比率が1:10〜15、病院によっては1:80の病院もある。休憩時間は1日平均29分であり、 『ご飯を流し込む』と表現している。戦争のような夜勤と表現され、『死ぬなら病棟で…』とスタッフは言っている。
 看護職員の実態調査から、妊娠順番制度(上司が決める)、暴力等の人権侵害、人員不足による健康被害・看護の質の低下が明らかになった。 夜勤を月6回とし、7回になれば有給をつけ、夜勤回数により追加手当をつけることを取り組んでいる。
 患者尊重・職員尊重・労動尊重病院づくりのキャンペーンを2015年から行っている。マスメディアを利用し、国民にも現状を伝えている。 国会議員全員と面談、デモ、ストライキ、キャンペーンを計画している。『お金より命を』と呼び掛けている。
 組合員の団結と闘いが大切と述べた。

日本医労連

清水明子氏
 世界に例のない16時間以上夜勤や不払い労働の横行等の問題に触れ、 患者の状況や業務量に看護師数が追い付いていない実態を報告した。
 また妊娠者の3割が夜勤免除なしで、3人に1人が切迫流産になり、 夜勤回数が9回以上では流産の比率が明らかに増加すると述べた。施設側では、短時間勤務者などに月に1回でも夜勤可能か依頼し、 可能であれば夜勤勤務者とみなし夜勤要員としている。
 これにより夜勤勤務者の増員ができず、看護師の負担となっている。看護師増員と夜勤交代制労働者の労働時間短縮の必要性を訴えた。

フロア発言から

北海道の病院で就職8か月の看護師が自死した。その看護師の母親が、看護師の夜勤労働条件の改善を訴え、二度とこのようなことがおこらないようにしてほしいと話した。
中国支部と四国支部の参加者 終了後に会場にて

まとめ

 世界レベルで夜勤勤務の労働条件が問題視され、改善に取り組んでいることが分かった。 各国で条件が違うため比較はできないが、情報を知り、活動の参考にしていくことができると分かった。
 現状を知っている看護師1人1人が、現在の夜勤労働が及ぼす悪影響を声に出していかないと、現状を変えることはできないと考える。
 看護師である私たちには健康を守る権利があり、看護師が健康でなければ、患者の命は守れないと訴えていく必要がある。