新手の不当労働行為と、団結の勝利
弁護士 上条 貞夫
弁護士 今泉 義竜
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@ 労働協約に明記された労働条件は、法的な効力を持つ(労働組合法14条)。その改定には、労使の新たな合意が必要であって、使用者側の都合や思惑で一方的に変更することは決して許されない。この制約を潜り抜けるために、期間の定めのない協約は90日の予告で解約出来るという労組法の特例(労働組合法15条3項、4項)を使って、一方的に協約を破棄した上、就業規則を変更して労働条件切り下げを実施するのが、経営側の常套手段となっている。
それでも、協約改定・破棄をめぐる団交で、経営側が不誠実な交渉態度に終始するときは、「就業規則変更の合理性を使用者が証明できなかった以上、就業規則変更は無効だ」、あるいは、「不誠実交渉は不当労働行為だ」、という労組側の追及が続く。
- A そういう追及を避けるために、たたかい得ない第二組合と先行妥結して、その結論を押しつける(両方の組合を平等に扱った、という外形をつくる)、そういう手法が、社会一般に、しばしば流行した。夜間看護手当の増額とセットに協定に定められた年末年始勤務手当と早出手当を廃止するという、大変な不合理を、第二組合と先行妥結して公共労に押しつけたのも、その例である。
このセットには公共労が同意しないことを、理事者側は百も承知の上で、第二組合と先行妥結し、平成23年4月以来、第二組合員には夜間看護手当を増額支給しながら、公共労組合員には増額支給を拒否して、公共労の内部に揺さぶりをかけた。これは典型的な不当労働行為であった。
公共労は、かねて職場の切実な要求である夜間看護手当の増額は、もとより賛成だが、セット提案の年末年始勤務手当、早出手当の廃止については労使の継続協議を求めた。しかし理事者側は、この継続協議を拒否したまま、第二組合員に対して増額夜間看護手当の差別支給を実施し続けた。
- B 公共労が東京都労委に不当労働行為を提訴したのは当然で、その審理を通じて差別支給の不当労働行為性は一層明らかになった。ここに都労委の場で、和解協議が開始された。しかし理事者側は、差別支給の既成事実にこだわって解決を引き延ばした。この局面を打開したのは、ほかならぬ公共労の年末年始勤務拒否闘争の構えで、この団結の力が、平成23年4月に遡って公共労組合員にも増額夜間看護手当を全額支給させる和解協定に結実した。
- 年末年始勤務手当と早出手当の扱いは、平成25年3月までに労使が誠実に
協議すること、協議が整った場合、同年4月以降も増額夜間看護手当が支給されることが、あわせて和解協定に盛込まれた。この3月までの労使協議について、公益委員から「双方とも、これまでの主張にとらわれることなく、文字通り誠実に協議していただきたい」と口頭で要望がなされ、労使とも、この要望を受け容れた。団結をしっかり守りつつ、この労使協議の納得のいく解決を目指して、新たな一歩の新年を迎えたことの意義は、本当に大きい。